ナイトハイキングについて
About Nighthiking
ナイトハイキングとは?
ここでいうナイトハイキングとは夜の暗い時に登山することを指します。
その目的は山頂や山の展望地から素晴らしい夜景を望むためです。
山(特に関西エリアの山)に登れば日本三大夜景を上回るレベルの夜景を望める展望地がいくつも存在しているので登るわけです。
ナイトハイキングの知識と技術について
暗い登山道を明るいヘッドライトをつけて歩くことは足元さえ気をつけておけば、
そんなに難しいことではないでしょう。ただ、登山中、それも暗い中で何かあった場合が問題なわけで・・・
例えば、足を踏み外して数メートル滑落してしまった、足をくじいて動けなくなった、
下山時に雪が積もったりして滑るので急斜面のところで下れなくなった、ガスってしまって
道がわからなくなった、道に迷ってしまってどこにいるかわからないなど、実はこれ全部、私が経験したことだったりします。その時にその状況をなんとかする術を知っていますか?そんな状況になるのを避けるにはどうするべきか知っていますか?ということが山岳知識と技術だと私は思っています。
そのために遭難記を読んだり、ロープワークなど山岳技術を身につけているわけです。
そしてこれは昼間であろうが夜であろうが同じことがいえると思います。
昼の登山経験が基本
当たり前ですが、昼の登山に慣れておくのが基本です。
山岳事故のほとんどは登りより下山時で、
もちろんナイトハイキングで暗くなってからの下山なので昼間より危険度は増します。
登山経験のない初心者同士のナイトハイキングや
夜の登山に慣れていないのに単独でのナイトハイキングは非常に危険です。
よくナイトハイキングしかしないのですか?という質問もありますが、
私は昼間の山行のほうがダントツで多くいっていますし、
アルプスや雪山の登山も大好きです!
最後に当サイトで紹介している夜景の中には厳冬期の積雪時に
ナイトハイキングしたものも紹介しています。
雪景色と夜景、その景色には魅了されますが、
積雪時の登山は無積雪時の登山より何倍も危険が伴い、雪山で遭難すると命にかかわります。
絶対に初心者や雪山経験のない人同士の雪山ナイトハイキングは辞めてください。
ナイトハイキングのスタイル
ナイトハイキングのスタイルは大きくわけて3パターンあるかと思います。
①明るいうちに登って暗くなってから下る
②夜の暗い時に登って、暗い時に下る
③深夜の暗い時に登って、夜が明けてから下る
夕景や西向きのトワイライトを望む場合は①、ご来光や東向きのトワイライトを望む場合は③、
他は②といったところでしょうか。
遭難は下山時に多いという点では一番安全と思われるのは③で、
これに関しては多くの登山者がご来光を見るためにしていることでもあります。
①は最も私がしているスタイルです。この場合、登り時は明るいうちに登るので、
その時に間に危険なところがないか確認しておく必要があります。
もっとも危険に思われるのは②をする場合。
これは昼間に一度登っておくなど下調べが必要になってきます。
最短ルートでピストンが基本
私のナイトハイキングは最短ルートのピストンが基本で日没前に登っておいて、暗くなってから下るパターンがほとんどです。ただし登りの工程で岩場が多かったりすると危険ですので、その場合は比較的安全なルートで、下山だけ危険な場合は別ルートで下ったりします。また何度も言いますがナイトハイキングしたいルートは昼間に登って一度下見しておくのがより安全です。
暗い登山道の歩き方
ナイトハイキングで一番よくありがちなのが、視界が悪いので足元のちょっとしたところが見えないことから、つまずいて転んでしまうことです。転ぶだけで済むならいいですが、
それが岩場や斜面の近くだと滑落する可能性もあります。そういうことも多々あったので
登山道の下りは足元を照らしながら一歩ずつ確実に道を踏み込んでいくように歩いていきます。
そして暗い登山道を歩きながら自分が今どの辺りを歩いているのか意識しておくことも重要です。
また、梯子や鎖場など危険な場所がある場合、後者が上から下に向かってライトを照らして先頭に下る人の視界広げる、次に先にいった人は下から上に向かってライトを照らし後に下る人の視界を広げるのもコツです。
ヘッドライトについて
夜の山で明るいのは夜景が見える山頂などの付近だけです。樹林帯に入り込むと真っ暗で何も見えません。
当たり前のことですが、ナイトハイキングはライトや明かりが命綱だと言っても過言ではないです。
明りがないと山の中を歩くことは不可能に近いです。予備のヘッドライトと電池は備えておきます。
時々、ペンライトや懐中電灯、携帯電話の光など使っている人がいますが、必ず両手を空けるため ヘッドライトを使うようにしてください。下山時は転びやすかったり、急な斜面での 鎖など手で身を支えないといけない場所があります。
次にヘッドライトの選び方ですが、明るさは90~100ルーメンもあればいけますが、それでもちょっと暗いという人も多いので200ルーメン以上を推奨します。それ以上の明るさに越したことはありませんが、光の視界が広いものを選ぶようにしています。視界が広いほど歩行が有利になります。
ライトと視界について
昼間と違って夜の登山道ですから視界は悪いのは当然です。
どれほどルーメンが高い明るいライトがあったとしても、
昼間のように明るくなることはありません。
昼間に普通に見えている道標や分岐なども夜だと普通に見落とすことがあるので注意が必要です。
装備について
一般的な登山道具に加えて予備のヘッドライトと電池は持っていきます。また夜の山はとても冷えることがあるので夏といっても防寒着は必ず持っていくようにします。手袋、ニット帽、ネックウォーマー、防寒着(レインジャケット、ダウンなど)はいつもザックに入れて持って行っています。
特にツェルトなどビバーグ系の装備まであると便利なので、私のザックの中には常に基本装備が常時入っているので、抜かずに持っていく感じです。
下山は尾根ルートが絶対的!
暗くなってからの沢ルートの下山は迷いやすく遭難率も高いのでご法度といっても過言ではありません。
私もルート的にやむを得ず暗くなってから沢ルートを下ることがありましたが、
正規ルートはここで沢を渡るのか?高巻きするのか?と迷い考えながら進んでは
何度もコースアウトしたり、時には沢にドボンしたりとルートファインディングの難易度はかなりあがります。
しかもよく知ってるルートでGPSがあっても普通にコースアウトしてしまうことさえ普通にあります。
それに沢ルートは滑落しそうな細い道や岩場、ガレ場だったりと下りにくく危険な要素盛りだくさんです。
ナイトハイキングで暗くなってからの下山は絶対的にといっていいほど尾根ルートを選びます。
それが遠回りになってもきっちり整備された尾根路や登山道(林道や舗装道など)のコースで下るように
するのが安全です。結局、沢ルートが最短距離であったとしても
「こっちかあっちか?」とルートファインディングしたり、コースアウトして登り返し(戻ったり)するのでその分下山時間も大幅にかかってしまうというわけです。
荒れた登山道を歩く場合
紹介しているコースの中には台風などで倒木したり、あまり人気がなく整備されていない登山道を歩くことがあります。荒れた登山道を歩いていると踏み跡がなくコースアウトしたり迷ったりすることもあるでしょう。まずは目的の山へ登るコース地図を事前にチェックしておき、どんな道をどこを経由して登っていくのかを頭に入れておくことが重要になります。例えば、沢筋から谷をつめて~峠に登り、そこから尾根に取り付いて山頂を目指すといったコースの全体図を事前に頭に入れておきます。基本的にナイトハイキングには読図ができることは必須条件です。そして、登山道が荒れている場合、木を跨いだり少し巻いたりしながら歩くのですが、できるだけ頭に入れてある沢筋や尾根路からコースアウトしないように意識しましょう。たとえ踏み跡があったとしても、それは単なる林業道である可能性があります。踏み跡があっても、その道がどの方向に向かっているのかを考えてコースアウトしないようにしましょう。また、木に巻かれたテープがあったとしても向かっている方向が正しいのか確認しながら歩いていかないといけません。
但し、あまりにも登山道が荒れている場合は途中で断念することもあります。
踏み跡がなくなった場合
中には人気がないコースや地図上では登山道になっていない場所も紹介しています。必ずしも整備された登山道に展望地があるわけではありません。何度も言いますが事前にコースの全体図を頭に入れておくことが必須条件です。そして、踏み跡がなくても、ピークの向こう側に展望地があるといった場合、無理矢理ですが尾根づたいにピークへ登ったりします。但し、そういうことが出来るのは尾根に限ります。尾根でない道の場合は向かっている方向を意識しながら歩くのですが、基本的に尾根以外の踏み跡のない場所を歩くのはオススメしません(紹介しているコースの中にそういう道はほとんどありません)。
また、整備されていない登山道や踏み跡のない道を歩く自信がない、今どこにいるかわからない場合は、残念ですがそこで断念をして引き返しましょう。山で無理をすると遭難につながります。
道に迷ってしまった場合
慣れた登山道でも私もときどき道を間違えることもあります。山道は季節や時期によっては姿が変わります。道に迷った場合は無理に下山せず、一旦は通ってきたルートを戻っていって道を再確認します。どうしてもわからなくなった場合は動き回らず、安全な場所を探して避難します。
最近ではスマホのGPSソフトが格安で手に入り、登山者に人気のようです。
スマホ用のGPSソフトは大体の現在位置を教えてくれますので、これを使わない手はないです!
さらに予備の充電器もあれば最高です。
読図の基本
いくらGPSで地図を確認しても読図ができないと意味がありません。読図の前に登山に使える地図はいくつかありますが、詳細な地形が読める25000分の1の国土地理院地図を利用するのが最もいいでしょう。有名な山と昭文社の高原地図がありますが、コースタイムや情報は記載されているものの細かい地形は読みにくく、有名なしか山域のものしか発行されていません。25000分の1の地図には標高10mごとに細い等高線と標高50mごとに太い等高線が引かれています。ちなみに等高線とは同じ高さを結んだ線のことです。標高10mごとに等高線が引かれているわけですから、その間隔が広ければ斜面はなだらかで、狭いと急斜面ということになります。
谷と尾根
山は基本的に尾根と谷(沢)でできています。地図で見ると尾根は山頂の高いところから低いところまで張り出しています。尾根にいる場合、周囲より高い場所にいて周りの地形は低くなっています。
谷は尾根に囲まれた低い場所で沢筋になっていて水が流れている場所になっていることがあります。地図で見ると麓から山頂に向かって等高線が張り出しています。当然、谷にいる場合は周囲の地形は高くなっているのです。ちなみに道に迷った場合、谷を下ってしまうと途中で滝があって下れなくなる場合があることを頭に入れておきましょう。
磁北線について
コンパスは地図上の真北を正しく指していません。その理由は地球の北極点がズレているからです。そのズレを磁北偏差といい約7.3度ほどズレています。北に行くほど磁北偏差は大きくなり南に行くほど小さくなります。いくら地図とコンパスがあっても磁北線に合わせないと位置がズレてしまうことになります。登山で地図とコンパスを使う場合は必ず地図の真北から分度器で7.3度ほど右へズレた線を引いておきましょう。コンパスはこの線を引いた磁北線を北に合わせて読図するようにしましょう。コンパスの詳しい使い方については本などを購入して頭に入れておいてください。
ナイトハイキングでの読図
ナイトハイキングでは辺りが真っ暗なため、地図とコンパスがあったとしてもなかなか現在地を判断するのは難しいでしょう。もちろんGPSがあれば一目瞭然でわかると思いますが、GPSがない場合は地形を読むしかありません。しかし真っ暗な樹林帯の中でヘッドライトの明かりだけを頼りに地形を読むのもなかなか簡単ではありません。あらかじめ地図でルートを確認しておいて昼間に下見登山をしておくことはもちろんのことですが、ナイトハイキングでは頭の中に地図を浮かべて、現在、自分はどのあたりのどんなところをどの方向へ歩いていっているのかイメージできるようになっておくことが重要です。これが出来るようになるためには昼間の登山で読図をして慣らしておく必要があります。
クモの巣対策
特に夏の夜の山道にはよくクモの巣が張ってあることがあります。ひっかかると気持ちが悪いので、クモの巣対策として取り除けるような棒などを拾って持っておくといいです。
動物との遭遇
ナイトハイキングをしていると鹿やイノシシなどの動物と遭遇することが多いです。
- 鹿 - 「ピー」という笛のような鳴き声が鹿です。鹿はこちらの様子を伺いますが、近づいてくることはありませんので、その場を離れるのを待ちます
- イノシシ - ヘッドライトの明かりを見るとものすごい勢いで逃げていきます。むしろこっちはその物音でびっくりします。慣れていないとびっくりしてパニックになる人もいますが、よほどのことが無ければ襲ってくることはありません。
- サル - 猿の場合は木の上からこちらを伺いますので、できるだけその場所から離れていきます
- クマ - 私も遭遇したことはありませんが、夜の登山ではラジオや音楽などを鳴らしながら歩くようにしています。そうすることで人間の存在を熊に知らせて鉢合わせを避けるようにします。それに音があると恐怖心もある程度は和らぎます。
- 鳥の鳴き声 - 夜の登山でよく女性の悲鳴のような「キャー」という鳴き声を出す鳥がいます。また狼のような鳴き声をする鳥もいます。いづれにしても鳴き声の正体がわかれば怖さはなくなるのですが、突然だと未だにビックリします。